最初の『新世紀エヴァンゲリオン』が1997年3月公開の『シト新生』と、同年7月公開の『Air/まごころを、君に』の2作品で完結したのは周知の通りですが、実は最初の『シト新生』ですべて完結するはずだったことを最近エヴァファンになった方では知らない人もいるかもしれません。
TVシリーズ『新世紀エヴァンゲリオン』が完結を迎えるはずだった最初の劇場作品『シト新生』が分作となることが発表されたのは1997年2月14日で、23年前の今日でした。劇場公開1か月前のタイミングでの分作発表はアニメファンだけでなく、社会現象となっていた当時としては非常に衝撃的でした。
2020年の今年、『新劇場版』となった新しいエヴァンゲリオンは、スタートから13年を経て6月で完結する予定です。新劇場版が完結する記念すべき年に、この旧劇場版の分作発表を振り返ってみたいと思います。
エヴァ初の劇場版
1996年3月でTVシリーズ全26話の放送が終了した『新世紀エヴァンゲリオン』。しかし、その最終2話はそれまでの謎をほとんど解明することなく、シンジの心の補完という形で終了しました。
その後、TVシリーズ最終2話を当初の脚本でリメイクしてTVシリーズの総集編と合わせたTVシリーズの完結編と、完全新作となる劇場版の二作の制作が発表されます。
TVシリーズの放映が終了したのが1996年3月。翌4月には「第弐拾伍話 終わる世界」、「最終話 世界の中心でアイを叫んだけもの」を当初の脚本に沿ったかたちで作り直す事が発表され、次いで劇場版の製作が発表された。最初に劇場版製作が発表された段階では、それは第弐拾伍話と最終話のリメイクとは別の完全新作オリジナルであると説明されていたのだ。
引用:WEBアニメスタイル アニメ様の七転八倒 【第60回 エヴァ雑記「EVANGELION DEATH AND REBIRTH」】より
このうち、当初の脚本でリメイクするとしていたTVシリーズ完結編が『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』になります。この時点で1997年春の劇場公開予定となっており、もう一つの完全新作は同年夏公開予定となりました。
前売り券発売は当時の日本記録を更新
1996年11月23日になると、『シト新生』の前売り券が発売されます。この時、全国限定各2万枚でレイとアスカのテレカが付属したものが発売。
このテレカ付き前売り券の人気はすさまじく、行列を成した徹夜組がマスコミに取り上げられ、発売当日の午前中で売り切れてしまいました。
https://evacollector.com/eva-no44-death-and-rebirth-reiasuka-telephonecard/
テレカ付きが瞬殺された前売り券はほかにも、ポスター付きやCD付きの前売り券も登場し(『シン・エヴァンゲリオン劇場版』のムビチケ付きCDの先祖みたいなもの)、特典なしのものも含めて最終的に20万枚を売り上げて当時の映画前売り券販売記録を更新しました。
コレクター的な話しとしては、限定テレカはショップや個人売買などで相当な高値で取引されました(自分が見た最高値は2枚で15万円)が、こちらのテレカはその後、エヴァ完結とともに価格は落ち着き、2020年現在では1,000円に満たないくらいの価格で取引されております。出回っている枚数が半端なく多いですから、むしろ当時の高値が異常だったといえるでしょう。
前売り券が発売され、『シト新生』の公開日時も1997年3月と決まったあとは、ファンだけでなく普段アニメを見ない人たちもエヴァの結末がどのようになるのかの話題ばかりでした。
突然の分作発表
そんな劇場公開への期待値が日に日に高まっていく中、突如、庵野秀明監督が記者会見を行い、そこで3月公開の『シト新生』ではエヴァンゲリオンは完結しないことが発表されます。その記者会見が行われたのが1997年2月14日、つまり23年前の今日でした。
当時の記者会見では【REBIRTH2 (仮)の製作について】と題した、こんな資料も配布されたようです。
これによれば、当初、予定していたよりも物語の構想が大きくなり、完結は2部構成をとった分作になることが決まったこと。これにより3月の劇場公開では【完結編第一弾】として総集編『DEATH』編と新作『REBIRTH』編の途中までが公開となり、夏に『REBIRTH』編の完全版となる『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』(このときの名称は『REBIRTH2 (仮)』)が公開されることになりました。
資料には複雑になった劇場版の解説図も載っております。
また、右下には「EVA製作委員会」名で1997年2月14日の日付が入っております。
資料の最後には、庵野秀明監督からのコメントが載っております。劇場版を“お楽しみいただければ、幸いです”とのこと。
このとき自分はどこで分作を知ったかもう覚えておりませんが、報道で庵野監督を見たのはよく覚えております。発表を聞いた感想はガッカリしたような、もう一度エヴァを楽しめると嬉しかったような複雑な心境でした。実際には制作されなかった完全新作映画が夏に公開予定でしたが、自分は確か当時はそれを知らなかった気がするので(いつ知ったか忘れた)、単純に夏まで完結が伸びたと思っていたようです。
とにかく、ブームが最も盛り上がっていた中、劇場公開1か月前に分作発表がされたのは、世間でも相当な衝撃でした。売り上げ記録を更新したほど売れた『シト新生』の前売り券は、未使用に限り『Air/まごころを、君に』でも使えることも発表されたのは当然でしょう。
その時の告知ポスターがこちら(サイズはB2ハーフ)。『REBIRTH2 (仮)』だったタイトルは、すでに『THE END OF EVANGELION』となっております。
こうしたポスターの告知もありましたが、実際には『シト新生』を見た人の中にはこれが完結編だったと思った人もいたようです。自分の周りでも結構な人が知らずに『シト新生』を見たため、あれで終わりなのかと怒っている人もいたりしました。その中にはもうエヴァ熱が冷めてしまい、夏には見に行かないという人もいましたね。
幻の完全新作
なお、最初に予定された完全新作映画についてですが、当初1997年夏公開予定だった完全新作は結局製作されず、『Air/まごころを、君に』がそこに収まることになりました。完全新作がどのようなストーリーだったのか長年不明のままでしたが、2014年10月23日に開催された第27回東京国際映画祭の特集上映【庵野秀明の世界】でのトークイベントにおいて、庵野監督自身が設定を語っております。
https://evacollector.com/event-tokyo-annohideakinosekai2014/
これによると、人類はどうやらATフィールドに守られた壁の中で暮らしているようで、壁の外には使徒がいて人類の脅威になっている・使徒は人間を食べる・使徒に対抗できるのはエヴァだけ・という『進撃の巨人』にかなり似ている設定だったようです(庵野監督自身もおっしゃっておりますが)。この完全新作は当初、鶴巻監督に依頼したようですが断られたとのことで、完全新作のエヴァは幻となりました。
そして新劇場版の完結へ
分作という衝撃はありましたが、その後は予定通りスケジュールが進み、旧TVシリーズは199年7月公開の『Air/まごころを、君に』をもって完結します。当時の新聞記事でも庵野監督が“終わった”とハッキリ語っております。
しかし、その10年後の2007年に『新劇場版』シリーズがスタートしたのは周知の通り。エヴァの人気は世代が変わっても衰えることなく、新しいファンを獲得しながら最初のTVシリーズから25年を経過してもなお人気は健在です。
その『新劇場版』も2020年6月公開予定の『シン・エヴァンゲリオン劇場版』で完結の予定。楽しみでもあり、どこかで完結しないでほしいと思っているのは、23年前の分作発表を知ったときと変わりませんね。もし、『シト新生』と同じく『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の分作が発表されたら、やっぱり同じように複雑な心境になりそうです。
以上、簡単ながらエヴァンゲリオンの旧劇場版分作までの流れの記事でした。また、当時のことがわかれば、この記事に追記していきたいと思います。
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