1995年の『新世紀エヴァンゲリオン』テレビ放映前から連載がスタートしていた貞本義行氏によるマンガ版『新世紀エヴァンゲリオン』の連載が先日完結しました。
連載期間は実に18年。このページでは完結記念として、簡単ではありますが貞本エヴァを振り返ってみたいと思います。
18年の連載に幕
アニメより一足先に連載が開始されたマンガ版『新世紀エヴァンゲリオン』ですが、その連載が『ヤングエース』2013年7月号をもって終了しました。

『月刊少年エース』でスタートした連載は、その後に掲載誌を『ヤングエース』に移しながら、実に18年間の長期にわたって連載されました。
そこでこの記事ではコミックスの売上やマンガ版とアニメ版の違いや、エヴァがヤングエースの表紙を飾った回数などのマンガ版エヴァの情報を簡単にまとめております。
連載期間
TVアニメ開始より10ヶ月ほど早い1994年12月より『少年エース』にて連載がスタート、最初の数ヶ月は毎号掲載されましたが、その後は幾度と無く休載と再開を繰り返しました(休載期間は最長で1年5ヵ月)。
その後2009年7月に創刊される『ヤングエース』に移籍が発表され連載再開しましたが、そこでも休載と再開を繰り返し、最終的に2013年6月に完結しました。
連載期間は休載期間を含め18年で、全96話。仮に毎月掲載されていれば、およそ8年ほどの連載期間だった計算になります。
コミックス売上げ推移
コミックスは2013年6月現在で13巻まで発売中。 残りの収録数を計算すると、次の14巻で完結すると思われますが、2013年10月現在、14巻の発売日は決まっていません。
※2014年4月追記:コミックス最終巻となる第14巻の発売日が2014年11月に決定しました。

これまで既刊コミックスの売り上げ推移は以下の通りです。
- 1996年 270万部
- 1997年 450万部
- 2007年 1,500万部
- 2013年 2,000万部
- 2014年 2,300万部
- 2014年 2,500万部(11月発売のコミックス第14巻・通常版の帯より)
漫画版とアニメ版との違い
アニメ(TV版・旧劇場版)と漫画版には序盤から細かい違いがそれなりにありますが細かい違いはキリが無いので、ここではコミックス14巻に収録された終盤部分の主な違いを大雑把に紹介します。
- アスカを助けに行く
ゼーレの切り札・エヴァ量産機と戦い、敗れたエヴァ弐号機。絶体絶命の弐号機をエヴァ初号機が助けに行きます。単に量産機と戦うだけでなく、傷ついたアスカを気遣い庇いながら戦うシンジの姿は、本誌掲載時に話題になりました。
ハッキリとアスカを助けると言うシンジ。この展開はアニメ版とは大きく異なるモノでした。
同じシーンのアニメ版ではシンジは助けに行かないため、二号機は量産機により串刺しにされ、原型を止めないほど食われてします。シンジが未だに“ヘタレ主人公”だと言われている最も大きな要因でしょう。
- 他者とのつながり
アニメ版と結論は似ていますが、漫画版はより強く、はっきりと他人の存在を望み、それに関わろうとしているような印象でした。
- 補完計画発動時のレイとの会話
アニメ版でのレイはシンジに問いかけるだけでしたが、漫画版ではレイの心情が語られます。 シンジと出会えたことが”嬉しかった”と語るレイ。
- ゲンドウについて
ゲンドウはアニメ版では冷酷な人間ですが、漫画版では色々な心情(嫉みや嫉妬)が語られ、より人間らしい印象を受けます。
アニメでは”すまなかったな、シンジ”と謝るだけだったゲンドウのラストシーンですが、マンガ版ではシンジが生まれた時を思い出して涙を流したり、”生きて自分の足で立って歩け”と父親らしくシンジを導こうとします。
ゲンドウのセリフに対してシンジは、”さよなら、父さん、母さん”と両親に別れを告げます。アニメ版では”さよなら、母さん”というセリフだったのですが、漫画版では父・ゲンドウに対しても目を向けていることがわかります。
これ以外にも漫画版ではゲンドウの心情やシンジとの会話シーンが多く描かれているのですが、以前から作者の貞本先生は「エヴァは親子の物語」と語っていたので、こうしたシーンが多く追加されたのではないでしょうか。個人的には、こうしたゲンドウについての追加シーンが、漫画版で最も気に入っています。
ちなみにアニメ版にも上の画像にあるような木の下でシンジとユイが会話するシーンがありましたが、ユイの隣にいるのは冬月でした。
シンジが赤ちゃんの頃ですのであくまでシーンが似ているというだけでですが、アニメではこうした会話のシーンではゲンドウよりも冬月の出番のほうが多かった印象です。
漫画版の最終回について
貞本氏はマンガ版エヴァについて、「基本的に旧劇場版を踏襲するが、自分なりの解釈として描いていきたい」(少年エース2009年10月号)と語っており、また「最終回のラスト数ページ分のアイディアだけは考えてあり、アニメ版とはまったく違ったラストになる」(少年エース2002年12月号)と語っていたので、早い段階からこのような形のラストを考えていたようです。
さて漫画版の最終回ですが序盤だけ紹介します。
扉絵は冬服のシンジ。本編ではいきなり雪が降っているシーンから始まります。エヴァの世界には四季は存在せず、ずっと夏だったのでこの時点でいきなりアニメとは違っています。
そして電車に乗って東京へ移動するシンジ。どうやら受験のために上京するようです。
そこでのシンジの「僕には将来なりたいものなんてない」というモノローグですが・・・
これは漫画の第1話とほとんど同じセリフです。
この後のシンジの考え方については若干変化していて、パラレルワールドなのかつながっているのかは不明ですが、最終巻のシンジはどことなく前向きに物事を考えようとしているようです。
ここではこれ以上触れませんので、コミックスで確認してみてください。
参考:TV版・旧劇場版それぞれのラストシーンはあまりに有名ですが、一応紹介しておきます。
TVアニメシリーズのラストシーン。碇シンジの心の補完計画が完結する話。有名な”おめでとう”です。
こちらは旧劇場版のラストシーン。 シンジとアスカの二人以外の人類すべてが消え、アスカの”気持ち悪い”のセリフで終わります。
アニメ版はTV・劇場版といずれも有名すぎるセリフとシーンになっていますが、こうしてみるとマンガ版のラストシーンはこれらとはだいぶ異なっています。個人的に一番救いがあると思うのはマンガ版でしょうか(TV版はそもそも世界がどうなったのか不明ですし)。
庵野秀明監督からのメッセージ
庵野監督はたびたびマンガ版エヴァについてコメントしております。
『ヤングエース Vol.9』特別付録に掲載されたメッセージがこちら。 「早くおわらせて下さい。がんばってね。」。この時点で2010年でした。
そして最終話の掲載された『ヤングエース 2013年 7月号』にも庵野監督のメッセージが掲載されました。 「長い間、ご苦労様でした。次回作も期待してます。」
ちなみにエヴァ最終回が掲載されたヤングエース2013年7月号では、庵野監督以外にも鶴巻監督や、大月プロデューサーなど、エヴァに関連した業界人からメッセージが掲載されました。
ヤングエースの表紙
最終回が掲載された『ヤングエース』2013年7月号の表紙には、主人公らしく碇シンジが単独で登場しました。
『ヤングエース』ではエヴァが表紙の号がかなり多く、エヴァのマンガが載っていない休載期間中にも表紙になったほどですが、シンジが表紙に登場した記憶がほとんどなかったのでちょっと調べてみました。
その結果、2009年に『ヤングエース』に移籍してからエヴァが表紙だったことが15回、シンジが表紙に登場したのはその内2回だけで(その中の1回はレイ・アスカと一緒)、他はレイ・アスカが大半という結果になりました。
以下は、『ヤングエース』にてエヴァが表紙を飾った主なものです。
- アスカ単独 6回(ヤングエース増刊時代 内1回)
- レイ単独 4回(ヤングエース増刊時代 内2回)
- マリ単独 1回
- レイ&アスカ ペア 2回
- シンジ&レイ&アスカ 1回
- シンジ単独 1回
表紙登場回数は、アスカがトップでした。てっきりレイがトップだと思っていたので、意外な印象です。
マリは1回だけ表紙に登場しましたがマンガ版には登場しないので(コミックス最終巻の描き下ろしで、学生時代のマリが登場しました)、新劇場版『破』の公開にあわせたサービスだったと思います。
なお、これらヤングエースの表紙を飾ったイラストの多くは、応募者全員プレゼントの図書カードになっております。
下記の記事でいくつかまとめてありますので、参考にしてください。

今後について
作者の貞元氏は「次回作に向けてがんばります」とコメントしています(ヤングエース2013年7月号巻末コメント)。
次回作というのがエヴァ関連なのか別の作品なのか(休載している別の作品もあります)不明ですが、例えば「破」から「Q」までの14年間を漫画化したり、新劇場版そのもののコミカライズもないとは言えないのではないでしょうか。
※2014年3月追記:2014年5月号より、エヴァのスピンオフ漫画の連載スタートが決定しました。

最終回の2ヶ月連続掲載
角川グループのプレスリリース(2013年6月7日)によれば、最終回を掲載したヤングエース7月号が完売続出につき、8月号にも最終回を再掲載することが決まりました。

通常ヤングエースは、エヴァ掲載号であっても売り切れて書店に無いということはあまり無いのですが、最終回掲載号だけは発売翌日にはほとんど見かけませんでしたので、普段買わない人が記念に買っていったのではないでしょうか。
参考HP
- エヴァ最終回で雑誌ヤングエース完売店続出! 超異例の次号再掲載が決定!!(角川グループ プレスリリース)